ポーランドの交通事情その2

―― バス・トラムについて ――

[2023年6月配信]

今回は、先月号に引き続き、元大阪府ITステーション職員で現在はポーランドに在住しているAさんにバリアフリーの視点から「ポーランドの交通事情」という話題でインタビューをしましたので、その内容を紹介します。

インタビューでは、「ポーランドの道路事情」(令和5年5月31日発行メールマガジンに掲載済み)、「ポーランドのバス・トラム(路面電車)」、「ポーランドの電車」という3つの話題で話を聞きました。

今回は、「バス・トラム」について紹介します。
 

幸田:ポーランドのバスやトラムの運賃はいくらくらいですか?

Aさん:料金は日本のように乗車距離で計算するのではなく、60分や120分など、乗車時間で計算します。

ポーランド国内でも料金に差がありますが、私が住んでいるトルンでは、市営の市内循環バスもトラムも60分3.8ズローチ(128円程度)です。
以前は90分3.4ズローチ(115円)だったのですが…。最近値上がりしました!
 

幸田:バスやトラムのチケットはどのように購入するのですか?

Aさん:市営の市内循環バスもトラムもチケットは共通で、同じチケットでバスとトラムの両方に乗れます。チケットはバスの停留所にあるチケット売り場、キオスク、駅のコンビニ、スマホアプリなどで買うことができます。

また、バスやトラムに乗車する前にチケットが買えなかった場合、車内に設置されている券売機で買うことができます。ただし、クレジットカードか現金のコインのみで支払わなければなりません。

バスやトラム車内に設置されている券売機の高さは比較的低いので、車いすの方も購入しやすいと思いますが、点字や音声ガイドはついていませんので、視覚に障がいのある方は難しいと思います。こういう時は、周りの人に助けを求めたら、誰かが手伝ってくれると思います。
 

幸田:購入したチケットは、降車時などに運転手に渡したりするのでしょうか?

Aさん:私が住んでいるトルンの市内循環バスやトラムの場合、乗車時に機械でチケットに日時を打刻する必要があります。バスやトラムには、様々なタイプの車両があるので、車両によって機械の位置が異なるため、視覚障がいのある方が一人で打刻することは難しいと思います。

打刻したチケットを運転手に見せたり、回収ボックスに入れたりする必要はありません。バスやトラムを降りたら捨てます。
ただし、市交通局の職員が一般人に紛れて乗車しており、バスやトラムが発車してしばらくすると突然検札(乗客の乗車券を調べること)を始めます。
チケットを持っていても打刻をしていない、有効時間を1分でも過ぎたチケットを持っているなど、有効なチケットを持っていない場合はいかなる事情があっても無賃乗車とみなされ、高額な罰金が課されます。

ちなみに、長距離バスや観光地行きのバスなどは、運転手からチケットを購入(またはオンラインで購入したものを提示)して、そのまま乗車する場合が多いです。
 

幸田:日本では障がい者手帳の等級により、障がいのある方とその介助者のバスや電車などの運賃が割り引かれる制度がありますが、ポーランドにもそのような制度があるのでしょうか?

Aさん:障がいのある方や高齢者は乗車料金が無料になったり、大幅な割引を受けられる制度があるようです。
詳しくはわかりませんが、障がいのある方は、障がい者カードを提示すると障がいのある方とその介助者の運賃が割り引かれるようです。
高齢者の場合は複雑なようで、様々な制度があるようです。もちろん、学生割引もあります。
 

幸田:バスやトラムには優先座席などはあるのですか。

Aさん:バスやトラムには優先座席はありますが、乗客の多くが障がいのある方や高齢者、女性を見かけると席を譲っています。また、車いすを固定するスペースもありますが、私は車いすの方がバスやトラムに乗っているところを見たことがありません。

すべてのバスやトラムがノンステップというわけではないようです。最新型にはノンステップバスがあります。また、段差に配慮されたトラムもあるようですが、私はまだ車いすなどの障がい者がバスやトラムに乗るのを見たことがありません。
 

幸田:バスやトラムの停留所では、日本のように到着するバスやトラムの行き先を音声や字幕で案内されるのですか?

Aさん:バスやトラムの停留所では、アナウンスは流れません。

バスの場合はフロントガラスの上に行き先が表示されていたり、プレートが掲げられていたりするので、それを見て判断します。

トラムの場合は、停留所の電光掲示板に到着する予定のトラムの行き先と停留所への到着時間が一覧で表示されています。
 

幸田:バスやトラムの車内には、停留所名を知らせる音声案内や電光掲示板はあるのですか?

Aさん:トルンの市営の市内循環バスでは、停留所名が音声でアナウンスされますが、電光掲示板はありません。

一方、トラムには停留所名を知らせる電光掲示板はありますが、音声ガイドはありません。

長距離バスや観光地行きのバスなどには、音声ガイドも電光掲示板もありません。視覚障がいのある方や聴覚障がいのある方は、運転手にサポートをお願いするしかなさそうです。
 

幸田:バスやトラムから降車するときは、停留所に着く前に降車ボタンを押して降りることを運転手に伝えるのですか?

Aさん:バスの場合、日本のように降車ボタンがついている車両もありますが、乗客の多くが自分が下りる一つ前のバス停を過ぎると席を立ち、出口に向かいます。
バス停に止まってから席を立って出口に向かうと、次のバス停で降りると思われて、バスが発車します。ポーランドでは、動いているバスで席を立つのが当たり前です。

トラムは、各駅に停車しますので、自分のおりたい停留所に着いたら、ドア近くにあるボタンを押して自分でドアを開けております。

ちなみに、民間企業が運営している田舎の観光地行きのバスの運転手の中にはバス停でない所でおろしてくれることもあるのでおもしろいです。
 

幸田:外国では時刻表通りに乗り物が来ないことがあるという話をよく聞きますが、ポーランドのバスやトラムは時刻表通りに来るのですか?

Aさん:市内循環バスは基本、時刻表通りに来ますが、予定時刻より遅れることもよくあります。とはいえ、予定時刻より早く来て出発することもあるので、10分ほど早くバス停に行かないと乗り遅れることもあります。
民営のバスや、田舎の市営バスはたまに来ないこともあるので困ります。

それから、バスの時刻表が複雑です。季節や時期、学校の休みなどによって細かく異なっていて、これが複数の記号で複雑に時刻表に印刷されています。
もちろん、記号の注釈が時刻表の下部に記載されているのですが…、何時に出発するどのバスに乗ればよいのか、探すのが大変です。
場所によっては複数の市営の市内循環バスや民間バスがあるため、わかりにくい時刻表だらけの所もあります。
おまけに、古い時刻表がそのまま貼ってあったり、インターネット上の時刻表も古いままであったりで、信用もできないのです。

時刻表に乗っていないバスが勝手に走っていることもあります!日本と違ってとても不便です。

私は、バスが来なかったため次のバスを気長に待ったり、他の移動手段を考えたり、出発をあきらめたりした経験が何度かあります。
バスが来たら「ラッキー!」と言ったところです。
 

今回は、ポーランドのバスとトラムについて紹介しました。いかがでしたか?

ポーランドのバスやトラムについて話を聞き、時刻表が複雑だったり、切符に打刻をしたり、駅名の車内アナウンスがなかったりと、一人でバスやトラムに乗って出かけるには少々慣れが必要だと思いました。しかし、周りの方がサポートをしてくださるのであれば、冒険してみるのも楽しそうですね。

ポーランドの交通事情第3弾の「電車について」はまたこのコーナーで紹介します。お楽しみに!
 

【参考】

ポーランドのバスとトラムの写真をいただきました。
ご興味のある方はぜひご覧ください!

http://www.itsapoot.jp/mailmaga/PolandRepo2.html
 


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