ポーランドの交通事情その3

―― 電車について ――

[2023年8月配信]

今回は6月号に引き続き、大阪府ITステーション元職員で現在はポーランドに在住しているAさんにバリアフリーの視点から「ポーランドの交通事情」という話題でインタビューをしましたので、その内容を紹介します。

インタビューでは、「ポーランドの道路事情」「ポーランドのバス・トラム(路面電車)について」「ポーランドの電車について」という3つの話題で話を聞きました。

今回は、電車について紹介します。
 

幸田:ポーランドでは日本のように街中に電車が通っていますか。

Aさん:首都のワルシャワには、日本の都会のように、街中を循環する電車がありますが、他の街だと電車で行ける場所が限られています。
近距離の移動にはバスやトラムを利用することが多いですね。遠距離や目的地に電車の駅がある場合は電車を利用します。
 

幸田:ポーランドの電車の運賃はいくらくらいですか。

Aさん:日本の運賃よりも、少し安いと思います。例えば、私が住んでいるトルンから隣町のビドゴシュチまでは約35キロ・所要時間40分ほどで12ズローチ80グロッシェ(約454円―8/23現在為替レート)です。
長距離電車の場合は、トルンからウクライナとの国境近くの街ザモシチまでを例に挙げると、約500キロ・所要時間7時間ほどで82ズローチ(約2,900円)です。長距離は特に安いですね。

ちなみにポーランドでは、料金を払えば自転車を電車に乗せることができます。
例えば、電車で30分くらいの距離であれば、乗車運賃が12ズローチ15グロッシェ(約431円)、自転車の運賃が8ズローチ(約284円)です。
 

幸田:電車の乗車券はどのようにして購入しますか。

Aさん:大きな駅であれば、基本的には有人の乗車券売り場で買います。
ただ、窓口が少なかったり対応に時間がかかったりするため長蛇の列ができ、どれだけ待たされるか分からないのが困ります。
券売機がある駅もありますが、同じ路線内に複数の鉄道会社の電車が乗り入れているため、非常に複雑でわかりづらいです。

買った乗車券と異なる鉄道会社の電車に乗ってしまうと、検札時に理由の如何に関わらず罰金が課されたりします。
都会では理不尽なことが多いですね。トラブルを避けるために時間をかけて窓口で乗車券を買う方が良いのかもしれません。

また、多くの駅には乗車券売り場がありません。利用者はインターネットでチケットを購入するか、電車に乗ってすぐに車掌を探して乗車券を購入します。

但し、都会の電車では、検札時に乗車券の購入を申し出ても無賃乗車として罰金を課されることもあり、車掌によって対応が違うのも困りものです。
その点、田舎の電車は、車掌も親切に対応してくれますよ。

長距離でも短距離でも、インターネットからオンラインでチケットが購入できるので、乗車時間が決まっているならば利用する方が良いと思います。
ちなみに、乗車券は、日本のように当日有効というものがなく、「この時間に発車するこの乗車券」を購入するのです。
 

幸田:乗車券は電車の降車時などに運転手や車掌に渡すのですか。

Aさん:乗車券は電車を降りたら捨てますが、乗車中は検札に来た車掌に見せる必要があるので、常に持っておかなければなりません。長距離電車では、車掌が変わるごとに検札に来ます。

インターネットで購入した乗車券は、スマホの画面を見せると車掌が表示されたQRコードを機器で読み取っていますね。乗車券売り場や車掌から直接購入した乗車券(レシートのようなもの)にはバーコードが印字されているので、車掌は同じようにそれを機器で読み取っています。

乗車券と合わせて身分証明書の提示を求められることもあります。
 

幸田:さて、バリアフリーの話ですが、駅構内には、日本のように点字ブロックが引かれていたり、エレベーターやスロープが設置されていたりしますか。

Aさん:駅構内やホームに大まかな道を案内する誘導ブロックが引かれているところもありますね。ホームの線路側や階段の前後には日本でいう警告ブロックも引かれています。
但し日本のように電車の停車位置を正確に決めていないため、その時々によって乗降口の位置が変わるんですよ。乗客は電車が止まってから入口に集まってきます。
残念ながら大阪の地下鉄などにあるような乗車位置を示す点字ブロックはありませんね。

エレベーターやスロープについては、少しずつ設置場所が増えているとは思いますが、まだまだないところの方が多いです。
 

幸田:日本では駅構内の電車の入線や発車を知らせるアナウンス、電車内での駅名のアナウンスがありますが、ポーランドにもそのようなアナウンスはありますか。

Aさん:電車が到着する10分程度前に「○○番線に△△行きの電車が来ます」というアナウンスが1度だけありますね。そのあとはアナウンスも音楽も無く電車が到着します。アナウンスが小さくて聞こえないことも多いです。

旅客案内板と到着した電車にも行先が表示されていますが、複数の電車が短い間隔で出入りするホームでは、視覚に障がいのある方には同伴者がいないと、アナウンスだけでは厳しいと思います。

電車内では、次の到着駅のアナウンスが駅に到着する10分程度前にありますが、聞こえないときもあります。アナウンスの無い電車もあったと思います。
次の駅名を知らせる電子案内板が付いている電車が多いですが、見ていると既に過ぎた駅名をずっと表示していたりします。まだまだバリアフリーとはいえませんね。

余談ですが、ポーランドでは、自分が降りる駅に着くアナウンスが流れると、多くの人が出口に向かって歩き出します。
 

幸田:日本では高齢者や障がいのある方、妊婦、子ども連れなどが優先的に座れる優先座席がありますが、ポーランドにも優先座席はありますか。

Aさん:優先座席、ありますね。しかし、日本のように座席のシートの色が一般のシートと異なっていたり、優先座席の絵が描かれているわけではなく、窓に「優先座席」とシールが貼られているだけです。なので、優先座席に座っていると気づいていない人もいると思いますよ。

あと、車いすの方には、電車の中にわかりやすい車いす用のスペースがありますね。
 

幸田:日本では、電車とホームの間の段差が低く乗降しやすい車両が増えつつありますが、ポーランドの電車はいかがですか。

Aさん:ポーランドの首都ワルシャワ近郊の路線や、私が住んでいるトルン近郊のローカル線には新しい車両が導入され、電車とホームの間の段差が低いバリアフリーの車両が増えてきているようですよ。

しかし、田舎の電車や長距離路線の電車は、階段状になっている車両が多く、高齢者や障がいのある方、大型キャリーバッグの人やベビーカーを押す人には電車の乗降が大変そうです。

また、車内の通路も狭く、移動するのも一苦労のようです。車いすの方が長距離電車に乗るのは結構大変だと思います。
見たことはありませんが、車いすの方が乗れるように乗務員が総出で車いすの方を乗せるのだと思います。混雑している電車では肩身も狭いでしょうし、入り口付近で待機している人もいると思います。
 

幸田:日本では障がいのある方は障がい者手帳の等級により、電車などの乗車運賃の割引制度がありますが、ポーランドにもそのような制度がありますか。

Aさん:バスやトラムと同様、障がいのある方や高齢者は乗車料金が無料になったり、大幅な割引になる制度があるようですね。

詳しくは知りませんが、障がいのある方は障がい者カードや身分証明カードを提示すると、障がいのある方とその介助者の運賃が割り引かれたり無料になったりするようです。
高齢者の場合は、様々な制度があるようです。
 

幸田:日本では長距離路線などに有料の座席指定電車がありますが、ポーランドにも有料の座席指定電車はありますか。

Aさん:ポーランドでは私の知っている長距離電車は座席指定のみのようです。電車の料金は、距離によって異なります。
日本のように特急券や座席指定の券はありません。それで座席が残っていない場合は、通路に立ったままか入口やトイレの前に座っていますね。

座席が空いていれば座ってもいいと車掌が言うので座る人もいます。そのため、日本では考えられないのですが、電車に乗ると自分の席に誰かがすでに座っていることが多々あります。
その場合、座っている人に言って席を空けてもらいます。しかし、時には知らない顔をしたり、文句を言って座席を空けない人もいます。
若い女性が、自分の席に座っているおばさんに席を空けるようお願いしたのに聞き入れてもらえず、あきらめて立ったまま電車に乗り続けているのを見たことがあります。
このような場合は、車掌に連絡して対処してもらえばよいのですが、相手が自分より年上の場合はそこまでできないですよね。
 

幸田:海外では、電車もバス同様によく遅れると聞きますが、ポーランドの電車は、時刻表通りに来ますか。

Aさん:電車もバスと同じく遅れることが多いですよ。10分・20分の遅延は遅れたうちにはいりません。1・2時間の遅延はよくあることです。「30分遅れ」が「1時間遅れ」に、そして「2時間遅れ」となり、最後には「やっぱり来ない」ということもあるようです。
私も実際に経験しましたが、ある駅で「乗客が急病で倒れました」とアナウンスがあり、その後何の説明もなく5時間以上電車で待たされました。

電車が遅れても日本のように丁寧なアナウンスはありません。また、トラブル時のマニュアルなどもなさそうで…。長時間何の情報もないまま、不安を抱えた状態で待たされることが多々ありますね。
 

幸田:電車が遅れたり運転を取りやめたりした場合、購入していた乗車券の返金などは行われますか。

Aさん:駅にもよりますが、乗り遅れや電車の遅延などで予定していた電車に乗れなかった場合、乗車券売り場で手続きするとその場で現金で返金してもらえます。

売り場が無かったり、他の理由ですぐに手続きできない場合は、インターネットからとてもわかりにくい複雑な返金申請書を提出して返金手続きをします。
このケースでは、返金まで数カ月かかりました。また、電車が大幅に遅れたときなど、運賃の一部が返金されるケースもあります。
 

今回は、ポーランドの電車について紹介しました。いかがでしたか?

乗車券の買い方が複雑だったり、長距離列車には階段などがあり乗りづらそうだったりしますが、レトロな雰囲気があり、一度乗ってみたいと思いました。

また、電車内では、初対面の人に話しかけられることが多いそうで、現地の人との交流も楽しめそうですね。ポーランドの温かい街の雰囲気が伝わってきます。
 

今回もポーランドの電車の写真をいただきました。
ご興味のある方は下記URLにアクセスしてぜひご覧ください!

http://www.itsapoot.jp/mailmaga/PolandRepo3.html
 


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