一般社団法人大阪府作業療法士会ICT活用支援推進委員会インタビュー

―― ICTでより豊かな生活を送るために ――

[2026年01月配信]

今回は、一般社団法人 大阪府作業療法士会のICT活用支援推進委員会の委員長を務められている作業療法士 河津 聡(カワツ・サトル)さんにインタビューをしましたので、その内容を紹介します。

 

河津さんは、地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センターで作業療法士として活躍されています。

 

作業療法士は、人々の生活(作業)を支えるリハビリテーションの専門職です。病気や怪我、障がい、加齢などによって生活に支障をきたしている人に対し、その人らしく生活が送れるように、身体的・精神的なリハビリテーションを行います。

テクノロジーの発展により、スマートフォンやスマートスピーカーなどのICTを活用した生活環境の調整や日常生活の支援も作業療法士に求められていることから、近年、一般社団法人日本作業療法士協会では、ICT機器を活用できる作業療法士の育成などにも力を入れています。

 

一般社団法人大阪府作業療法士会では、2023年にICT活用支援推進委員会を立ち上げ、現在約20名の作業療法士が運営委員として携わっています。

委員会の主な活動として、

①ICTを活用した支援ができる作業療法士の育成、

②大阪府民に向けた作業療法士によるICT活用支援の紹介

などを行っています。

「患者さんにとってもICTに詳しい作業療法士に出会えるかどうかで生活水準が大きく変わってくると思います。ICT機器を活用すれば、諦めていたこと、できないと思っていたことなどができるようになることもあります。」(河津さん)

 

ICT活用支援推進委員会では、ICT機器についてほとんど知らない初心者向け研修とすでにICT機器を活用した支援について知っている人を対象にした上級者向けの研修をそれぞれ年に1回ずつ開催し、ICTを活用した支援ができる作業療法士の人材育成に努めています。研修では、講義と実践形式を組み合わせ、実際に機器に触れたり、スイッチを作ったりする実践に力を注いで行っています。

 

啓発活動では、一般社団法人日本支援技術協会と共催で、バリアフリー展では日常生活の中で活用できるICT機器の紹介、関西キッズ機器展では未就学児から小学生まで段階を踏んでICT体験をしてもらうなどの活動を行っています。それらを通して、ICTの活用事例や作業療法士が行う支援について紹介しています。

「関西キッズ機器展では、Nintendo Switchのゲームコントローラーが手の障がいで操作できない発達障がい児にアクセシビリティーコントローラーを使って操作をできるように支援してマリオカートのプレイ体験をしてもらいました。いつも兄弟がゲームをしているところを見ているだけであったが、自分もゲームに参加でき、一緒に遊べると、ご本人もお母様も喜ばれていました。」(河津さん)

 

ICT活用支援推進委員会は、河津さんの同僚の作業療法士がバイク事故により頚髄を損傷し、首から下が動かせなくなり、車いす生活となったことをきっかけに立ち上げられたそうです。

「とても前向きな方で、『どんな形でもいいのでまた作業療法士として働きたい』と話されていました。その方は、現在、スマートスピーカーなどのICT機器を活用し、一人暮らしをし、訪問看護の分野や専門学校での講師など、幅広く活躍されています。

その様子を見て、ICTを活用した支援の重要性を感じました。

しかし、すべての作業療法士がICTを活用した支援ができるとはかぎりません。まずは大阪府内でICTを活用した支援ができる作業療法士を増やしたいと思いました。」(河津さん)

 

「一昔前なら高額な意思伝達装置や環境制御装置を整える必要があり、それらを購入して使うには、非常に高いハードルがありました。

それが今や一般家電として普及し、数千円から数万円のスマートスピーカーや端末を準備するだけで、発話によりエアコンの操作、電気のオン・オフ、テレビのチャンネル操作などができるようになりました。

このような身の周りにあるテクノロジー(アルテク)を使うことで、重度肢体不自由者のテクノロジー利用のハードルも大きく下がったといえるでしょう。

しかし、機器導入について、便利だから導入するのではなく、導入後も日々の生活で継続的に使用できるようにするために、対象者の生活環境や周囲の協力がどれだけ得られるかを慎重に検討する必要があります。

「使うひと」、「サポートするひと」、「生活環境」など多角的な視点で支援をする必要があります。

一般家電のテクノロジーが進化したからといって、安易にそれらの機器を導入することはできません。当然ですが、一般家電製品は販売のみでその後のサポートはありません。初期設定やトラブル発生時の対応、継続的な機器のメンテナンスなど、一度機器を導入すると常に使える状態に保ち続ける必要があります。

それには、周囲にテクノロジーに詳しい支援者がいなければなりません。

そのような環境が整わない限り、一般家電製品を支援機器として生活の中で活用することはできません。

一方で、意思伝達装置や環境制御装置などの支援機器は、補装具や日常生活用具として支給されるため、業者などからのサポートが得られます。そのため、機器の導入にあたっては、対象者の生活や周囲の環境などを考慮して、しっかりと見極めながら検討しなければならないのです。」(河津さん)

 

大阪のような大都市であれば、支援機関もあるため、比較的支援が届きやすいでしょう。しかし、地方はそうではありません。そこで、一般社団法人日本作業療法士協会では、地方の作業療法士もICTを活用した支援ができるよう、所定の研修を受けた作業療法士を対象に1か月間、意思伝達装置や入力スイッチなどを貸し出すIT機器レンタル事業を行っています。

また、ICTを活用できる支援者の育成に力を入れるため、次年度からICT活用推進事業を行う予定だそうです。

「ICTを活用した支援を行いたいけれど、できないということは、作業療法士にとっても患者さんにとっても不利益になります。

このICT活用推進事業がうまく回れば、大阪で行っているICT活用支援推進委員会と同じような活動が各都道府県で展開されていくと思います。」(河津さん)

 

河津さんは、ICTを活用した支援ができる専門家として作業療法士がいることをより多くの人に知ってほしいと話されていました。

「作業療法士をもっと活用していただきたいと思っています。ICTを活用した支援のニーズが増えれば、作業療法士の知識も深まり、スキルも向上していくと思います。」(河津さん)

 

日々作業療法士のICT活用におけるスキル向上に尽力されている河津さん。

大阪で研修会を開く中で、他府県ではICT活用研修があまり開催されていないことを知ったそうです。

「まずは近畿地方の各作業療法士会と連携し、ICTを活用した支援ができる作業療法士の育成ができる環境を作っていきたいです。」河津さんが熱く話してくれました。

 

p>テクノロジーの進歩により、スマートフォンやタブレット、スマートスピーカーなど身の回りにあるテクノロジーを福祉機器として活用できるようになりました。その一方で、一般家電を利用する場合、初期設定からメンテナンスまですべて支援者が行わなければならず、利用にあたっては永続的な支援が得られるかなど課題もあり、安易に導入できない事情もあります。

誰もが「できない」から「できる」へとテクノロジーを生かした生活が送れるよう、作業療法士をはじめとする各支援機関との連携など、重度障がい者の支援体制を整えていく必要があると思いました。

その中で、対象者にとって一番身近な作業療法士によってICTを活用した支援ができれば、より多くの人がより豊かで便利な日常生活を送れると思いました。地域によっては支援の差があるなど、課題もありますが、少しでも多くの作業療法士の方がICTを活用した支援ができ、一人でも多くの人がICT機器と共に充実した生活が送れる体制が整うことを願っています。

 

今回もインタビューの様子を掲載しました。

ご興味のある方は下記URLをご参照ください。

http://www.itsapoot.jp/mailmaga/interview202601.html

 

【参考サイト】 一般社団法人大阪府作業療法士会

https://osaka-ot.jp/

 

本文は以上です。


関連ページ「大阪府作業療法士会ICT活用支援推進委員会インタビュー」に戻る

  • 重度障がい者ICT支援のページへ移動する
  • 講習会やイベントのお知らせ等をお送りします メールマガジンのページへ移動する
  • 幸田麻由の職場レポートのメニューに移動する