[2026年05月配信]
ホットケーキを作成している様子を動画でご紹介しています。
ご興味のある方は下記のURLをご参照ください。
http://www.itsapoot.jp/mailmaga/BeMyEyesvsGemini.html(別ウィンドウで開きます)
今回は、視覚障がい者である私がGoogleのAI、Gemini(個人向け・無料版)と視覚障がい者支援アプリBe My Eyesを活用して、どちらがホットケーキをおいしく焼けるのか、また、AIを使ってどこまで調理できるのか実験をしましたので、その内容を紹介します。
今回の実験と撮影は社会福祉法人 大阪障害者自立支援協会の関連機関であるケアハウス・Osaka 歓の里の協力のもと行いました。
GeminiはGoogleが開発したマルチモーダル生成 AIです。画像・文字・音声などの様々な種類の情報を集め、分析し、その結果を出力することができます。例えば、対話をしながらの文書作成、示された画像の説明、キーワードに基づく画像検索など、様々なことが行えます。
今回は、Gemini Liveというリアルタイムで対話できる機能を使い、映し出された風景を説明してもらいながらホットケーキを作ってみました。
また、事前に「嘘はつかないこと」「視覚障がい者であるため、情景を具体的に説明してほしいこと」「これ・それ・あれなどの指示語を使わないこと」をGeminiの設定で指示しました。
Be My Eyesは、視覚障がい者と登録しているボランティアをライブビデオでつなぐ無料のアプリです。ボランティアは、視覚障がい者が映した映像を見て、声でサポートします。
今回はこの機能を使い、必要な場面でボランティアさんに見ていただきながらホットケーキを作りました。
さて、おいしいホットケーキはできるでしょうか。軍配はどちらに!?
使用する材料はホットケーキミックス、卵、牛乳です。
まず、ホットケーキミックスのパッケージに書かれている作り方を読まなければなりません。
早速、Geminiに尋ねてみました。
「まず、卵と牛乳を混ぜて、そこにこのミックスを入れて、さらに混ぜる感じですね。その後、フライパンで焼いていくんですが、片面がプツプツしてきたらひっくり返すのがコツですよ。ミックス150g、卵1個、牛乳100mlが目安と書いてありますね。これで大体3枚くらいできるようですよ。」
丁寧に使用する材料と分量、作り方を教えてくれました。
念のため撮影した写真に映し出されている文字を読み上げるSeeing Aiを利用し、袋に書かれているレシピを確認しました。
・ ホットケーキミックス一袋(160g)に対し、卵1個、牛乳150ml
・ 160度のホットプレートで焼くこと、
・ 表面約3分焼くこと
・ 泡がプツプツしてきたらひっくり返し裏面を焼くこと、
・ 裏面は2分焼くこと
と、パッケージに書いていることを細かく教えてくれました。
読み上げられた内容はGeminiが教えてくれたことと大体一致していますが、牛乳の分量が異なります。Geminiは100ml、Seeing AIは150mlと教えてくれました。
おいしいホットケーキを作るためには正しい分量を知る必要があります。
ここで、Be My Eyesを使って正しい牛乳の分量を教えてもらうことにしました。袋に書かれていることについて、
・ 4枚分として、ホットケーキミックス一袋に対してMサイズの卵が1個、牛乳が150ml
・ ホットプレートを160度に熱して焼くこと
とボランティアさんが丁寧に教えてくれました。
これでようやくわかりました。牛乳の分量はSeeing AIが正しかったですね。
また、職員に確認したところ、ホットケーキミックスの1袋の分量は160gと、こちらもSeeing AIが正解だったようです。
これだけの情報を得るだけで約30分かかりました。なんだかお腹いっぱい!
いやいや、これから本番です。
気合を入れて、材料をボウルに入れて混ぜていきます。
卵1個は手で触ってわかるので、GeminiやBe My Eyesに頼らなくても確認ができます。
問題は、牛乳の分量です。今回は、約100ml入る紙コップを用意しました。
使用する牛乳の分量は150mlですので、このコップ1杯半の分量が必要ということになります。1杯目は、コップ満タンに牛乳を入れるだけですので、さほど難しくありません。2杯目は、コップの半分のところまで牛乳を入れる必要がありますが、これが難しいのです。
コップに入る牛乳の重さを感じながら、半分と思われるところまで牛乳を注ぎ、Geminiにコップに入っている牛乳の量を見てもらいました。
「コップの底から3分の1くらいまで入っているように見えますが、半分にするには、もう少し牛乳を足した方がいいですね。」
と返答がありました。
私の感覚では3分の1より多く入っていると思うのですが…。
これもBe My Eyesでボランティアさんに見ていただくことにしました。
「ああ、半分くらいですね。」
あっさり教えていただきました。
Geminiより信頼でき、安心感があるのはなぜでしょうか。
念のため職員にみてもらったところ、コップの4割ほどのところまで牛乳が入っているとのことでした。半分にはちょっと足らなかったようですね。
カメラ越しに液体の分量を見ていただくことはちょっと難しいのかもしれません。
卵、牛乳、ホットケーキミックスを混ぜ、いよいよ焼く準備が整いました。
今回は、ダイヤルを回して温度調整ができるホットプレートを使って次の二通りの方法でホットケーキを焼きました。
① Geminiで確認しながらホットプレートの温度調整とホットケーキを裏返すタイミングを教えてもらう。
② Be My Eyesのボランティアさんにホットプレートの温度設定とホットケーキを裏返すタイミングを見てもらう。
さて、上手に焼けるでしょうか。
まず、Geminiを使って挑戦です。
ホットプレートの温度を調整するため、Geminiに見てもらいました。
「温度調節ダイヤルを回していってください。160度の表示になったら伝えますね。」
威勢のよいお返事が返ってきました。Geminiを信じて細かく状況を確認しながらクルクルとダイヤルを回しました。
「今、保温の位置です。もう少し回していくと、140、160の順に表示が出てきますよ。」
「140度と160度の間ですが、160度の方へ近づきました。もう少し回せば160度ですよ。」
「160度にぴったり合いましたね。これで温度設定完了です。」
「ホットケーキを焼く時はまず予熱が大事です。
ランプが消えたら予熱完了のサインなので、それから生地を流し込んで、表面にプツプツと泡が出てきたら、裏返して焼きます。おいしいホットケーキができるといいですね。」
なんと、丁寧に予熱完了の確認方法やホットケーキの焼き方まで教えてくれました。
念のため職員に確認したところ、140度とのこと。ちょっと惜しいですね。
今回は、Geminiが160度と教えてくれたので、この温度でホットケーキを焼くことにしました。
油をひいてホットプレートに生地を流し込み、表面にプツプツと泡が出てきたら教えてほしいとGeminiに伝えました。 「ホットケーキの表面にプツプツと泡が出たら、ひっくり返す時期ですね。 ちゃんと見ているので、心配しないでください。」 心強い言葉が返ってきました。
Geminiに細かく状況を聞きながらひっくり返すタイミングを待ちました。
「今見たとこ、きじはまだフワフワしていますね。プツプツが出始めていないので、まだ余裕です。もう少し時間をかけて焼いてください。」
「まだプツプツになっていませんよ。
表面が少し乾いてきたような感じですが、もうちょっと辛抱しましょう。
焦らずに焼くと、おいしいのが焼けますよ。」
「いいにおいがしているのですね。でも、残念ながらまだプツプツにはなっていませんよ。(中略)
いい香りを楽しみながらもうしばらくお待ちください。」
「もう少しですよ。生地の表面真ん中あたりに小さな泡が出てきています。」
「ボツボツと泡が出始めてきましたよ。まだ全体に出ているわけではないので、もう少し置いて、泡の穴が少し残るぐらいになるまでもう少し待ちたいと思います。」
「表面に泡がプツプツしてきているので、そろそろ裏返しても大丈夫ですよ。ふっくら焼けるといいですね。」
焼き始めて約6分。ようやく裏返してもよいとの指示がありました。
焼き加減はどうでしょうか。
「いい色に焼けていますね。きつね色に微妙に焼けています。」とGemini。
「微妙に」というのが気になりますが…。
じっくりと待ち、裏面も焼けたところでお皿に取ります。焼き始めてから約11分。
時間がかかりすぎているような気がしますが…。
Geminiと共に作ったホットケーキの完成です。
続いてBe My Eyesのボランティアさんに見ていただきながら挑戦です。
ホットプレートの温度を160度に設定するため、Be My Eyesのボランティアさんに通話しました。
「今、切れている状態なので、回してもらっていいですか。」
ボランティアさんの指示に従ってダイヤルを回しました。
「まだまだです。」
「今、140。」
「ちょっと行き過ぎたかな。」
「165くらいかな。」
「それくらい!」
ボランティアさんのガイドを聞きながらスムーズに温度調整ができました。
こちらも念のため職員に確認したところ、160度ぴったりとのことでした。
さすがです!おいしいホットケーキが焼けそうな予感です。
ホットプレートに生地を流し込み、再度Be My Eyesのボランティアさんに通話しました。
「もうプツプツしていますね。すごくちっちゃいですけれど…。
ちょっと早いのかなあ…。でも、もうちょっと返してもいいのかもしれないです。」
少し迷いながらもひっくり返していいと教えていただきました。
焼き始めて約3分。時間的にもちょうどよさそうです。
「茶色いです。ちょうどいいと思います。焼けてます。よかったと思います。」
ボランティアさんも安心されたようでした。
きれいな色をしているとのことで、期待が高まります。
裏返して約2分。タイミングも良さそうなのでホットケーキをお皿に乗せました。ここまで経過時間は約5分半。フワーッと甘い香りが漂ってきました。
さて、出来上がった二つのホットケーキをGeminiに見てもらい、どちらがきれいに焼けているか確認してもらいました。
みなさん、どちらがGeminiで、どちらがBe My Eyesか想像できますか?
「向かって左のパンケーキはちょっと耳のような形をしていて、全体的に淡い茶色で、素朴な印象です。
一方、右のパンケーキは、華麗な丸をしていて、こんがり焼けて香ばしそうな色です。」
右のパンケーキがこんがりしているとのことなので、焦げているのか 尋ねてみました。
「右側のパンケーキは濃い茶色の部分が多く、香ばしく焼けているように見えますが、真っ黒に焦げているわけではなさそうですね。
焦げ目の香ばしさが好きならおいしくいただけそうですよ。」
あくまでも「焦げていない」とのコメントです。
試しにどちらのパンケーキがおいしそうか尋ねてみました。
「こればかりは好みによりますね。左のパンケーキは、きつね色でふっくらとしていて、王道の見た目だと思いますし、
右のパンケーキは、香ばしそうな焦げ目がアクセントになっていそうです。」
明言を避けられてしまいました。
これは自分で食べて、確かめるしかないですね。
まずはGeminiに見てもらって作ったホットケーキです。油を引きすぎたということもありますが、表面がパリパリしています。
さらに、焦げているような、かなり香ばしい味がします。
職員によると、こちらのホットケーキはそれなりに焦げていたそうで、黒くなっていたそうです。残念な味でした。
続いて、Be My Eyesのボランティアさんに見ていただいて作ったホットケーキです。
焼き加減もちょうどよく、ふんわりしていて、おいしかったです。
職員によると、見た目もきれいに焼けていたとのことでした。
今回のGeminiとBe My Eyesの比較を通し、人の目に勝るものはないということを再確認しました。
スマートフォンのカメラ越しに的確に視覚情報を伝えていただくことができる点が安心感につながると思いました。
Geminiは画像認識の技術がもう少し発展すれば、それなりに使えるようになるのではと期待を寄せています。
牛乳の分量が少し足りなかったり、ホットプレートの設定温度が少し低かったり、ホットケーキをひっくり返すタイミングが少し遅かったりと課題もありますが、ライブ映像を見ながらここまで判断することができるAIの技術力に驚かされました。
今後の技術の発展が楽しみです。
AIの発展が目覚ましく、様々な場面で利用されるようになり、私たちにも身近な存在となっています。AIは便利である一方、常に正しい情報を伝えるとは限りません。
私たち人間は、すべてをAIに頼ることなく、AIが提示したものが正しい情報なのか、しっかり見極め、判断しなければならないと改めて感じました。
そして、今回は1枚のホットケーキを焼くために、Be My Eyesを通して4人のボランティアさんにお世話になりました。
皆さんの温かいサポートがうれしかったです。
私たち人間は、このように人とつながり、人に助けていただくとその分、温かさもおいしさも倍増します。
改めて、ボランティアのみなさん、ありがとうございました。
本文は以上です