エレコム株式会社インタビュー

--誰もが使いやすい製品を目指して インクルーシブデザイン製品への挑戦--

 

写真:インタビュー風景。左が佐伯さん、右が古谷さん。

昨年(2025年)11月、大阪に本社があるエレコム株式会社が、自社初となるインクルーシブデザイン(障がいの有無にかかわらずだれにとっても使いやすいもの)の製品として、振動で電池残量を知らせるモバイルバッテリー「触覚フィードバック搭載モバイルバッテリー DE-C78L-10000」シリーズを発売しました。
今回は、その開発者にインタビューをしましたので紹介します。

 

写真:DE-C78L-10000シリーズのパッケージ。左が白ちゃんのついたホワイト、右がブラック。クリックすると別ウィンドウで拡大写真が表示されます。

エレコム株式会社は1986年にパソコンラックの販売会社として大阪で創業しました。デジタル機器の普及に伴い、マウスやキーボード、ディスプレイなど、PC周辺機器の製造・販売へとビジネスの幅を広げ、デジタル機器のアクセサリーメーカーとして広く知られるようになりました。

近年では、体重計などのヘルスケア製品、ミキサーなどの調理家電、ヘアドライヤーなどの美容製品、ゲーミングコントローラーなどのEスポーツ関連製品など、様々な人の生活を支える機器を製造しています。

そして、今回、新たな取り組みとしてインクルーシブデザインの商品開発に乗り出しました。

その第一号が「触覚フィードバック搭載モバイルバッテリー」です。

 

今回は商品企画を担当した佐伯綾子(さえき・りょうこ)さん、プロダクトデザインを担当した古谷昇大(ふるや・しょうだい)さんに話を伺いました。

 

佐伯さんは長年、プロダクトデザイナーとして、商品の開発などに携わってこられました。

写真:佐伯さん。

そんな中、2・3年前に米ラスベガスで開催されていた世界中の名だたる企業が出展する電子機器やテクノロジーの展示会CES(Consumer Electronics Show)で、大手メーカーがインクルーシブデザインの製品を作っていることを知ったそうです。そこから、インクルーシブデザイン製品への取り組みが始まりました。

「正直なところ、ユニバーサルデザインや人間工学(エルゴノミクスデザイン)などの言葉は知っていましたし、そのような製品があることも知っていました。インクルーシブデザインはこのとき初めて知りました。製品の開発過程で『障がいのある方のご意見を聞きながら一緒に作っていく』という製品開発におけるプロセス、『障がいのある方にも使いやすくすることで、多くの人が使いやすくなる』という考え方が私の中でしっくりきて、『やってみたい!』と思いました。」(佐伯さん)

 

当初、障がいのある方との接点は全くなく、作業療法士、医師、福祉関連機関の関係者、様々な障がいのある方々など、いろいろな人に会い、一から人脈を築き上げていったそうです。

「障がいのある方がパソコンやスマートフォンをどのように使っているのか、ICT機器を使う中で困っていることはないか、どのような工夫をして機器を使っているのかなど、いろいろ尋ねました。本当にインクルーシブデザインの製品ができるのかという不安がよぎる中、2年くらいさまよいました。」(佐伯さん)

そんな中、ある視覚障がいのある方からモバイルバッテリーの電池残量を確認することに苦労されているという話を聞き、それならばと視覚に頼らない方法で電池残量を確認できるモバイルバッテリーの開発に乗り出すことにしました。

 

写真:古谷さん。

機器のデザインは古谷さんが中心になって進められたそうです。

「視覚障がいのある・なしにかかわらず、だれもが持ちやすい形状を模索しました。『いかにも福祉機器』という見た目にならないようにデザインを考えるのに苦労しました。また、機器を作る過程で、USBポートの位置など、本体内部の配置に様々な規定があるなかで持ちごこち、挿しやすいポートの位置、ボタンの配置などにこだわって設計しました。今回の取り組みで、自分の中の新しいデザインの要素が開花しました。」(古谷さん)

商品の開発にあたっては、視覚障がいのある方に実際に形状や手触り、振動の強さなどについての意見を聞きながら進められました。

 

USBのタイプAの両面挿しの説明図。

「USBのタイプAの両面挿しについて聞いたことはありました。ただ、コスト面や強度など、製品に採用するにあたり、課題もありました。しかし、インクルーシブデザインの製品を開発するにあたり、視覚障がいのある方がUSBタイプAの挿し込みに苦労されていることを知り、USBタイプAの両面挿しの需要があることに気づきました。視覚障がいのある方だけでなく、高齢者も、そして、むしろ見えていても向きを確かめずに端子を挿し込む人もいます。デメリットを超えたメリットがある。と思い、採用しました。」(佐伯さん)

 

写真:パッケージの底面。ミシン目に沿って開くようになっている。

今回は、製品本体だけではなく、製品パッケージにも工夫を凝らしているそうです。

「パッケージもインクルーシブデザインにしようと思い、開けやすいパッケージを採用しました。開け口にはエンボス加工を施し、触ってわかるようにしました。パッケージを開けやすくすると、商品が落下しやすくなったり、盗難被害にあいやすくなったりします。このような課題をクリアすることが大変でした。」(古谷さん)

 

写真:DE-C78L-10000WF。USB Type-c挿込口を上、電源ボタンが右になるよう置いた外観。

私(幸田)が初めてこの製品を手にしたとき、非常に手になじみやすい形だと思いました。片側の側面が本の背表紙のように湾曲しており、その対面の側面は平たくなっています。機器を手にするだけですぐに向きがわかることは、視覚障がい者当事者としてありがたいポイントです。機器の向きがわからず、何度もくるくる回して確認することも多々あります。

また、電源ボタンも触って直感的にわかるように工夫されているのもこのモバイルバッテリーの特徴です。平たい側面の上部にひときわザラザラとした部分があり、その真ん中に大きな丸いボタンがドーンとついています。触るとすぐに「電源ボタンだ!」とわかる、このアナログチックなボタンもお気に入りポイントです。

そして、私の一押しポイントがUSBタイプAポートの両面挿しです。通常USBタイプAの向きを確かめ、機器の挿込口の向きを確かめ、ようやく端子を挿入するのですが、挿し込む差し込む向きを間違え、イラっとした経験がある人は少なくないでしょう。

佐伯さんと古谷さんの思いが詰まったエレコム初のインクルーシブデザインの製品、モバイルバッテリー。エレコム社のキャラクター“しろちゃん”が描かれたホワイトが私のお気に入りです。

 

触覚フィードバック搭載モバイルバッテリー DE-C78L-10000WFの解説動画はこちら
(別ウィンドウで開きます)

 

インタビューを通じ、佐伯さんと古谷さんが手探りで丁寧に製品を作り上げられた様子がひしひしと伝わってきます。お二人の「障がいのある方のための製品ではなく、みんなが使いやすい製品」という言葉が印象的です。障がい者も一人の消費者として見てもらえていること。それが素晴らしいことだと思います。

今回のインクルーシブデザインのモバイルバッテリーの開発を機に、エレコム社内ではインクルーシブデザインの製品開発に興味を持った社員もいるそうです。近い未来、新たなインクルーシブデザインの製品がエレコムから発売されるかもしれません。

次は何ができるのか。今から楽しみです。

 

【参考サイト】

エレコム株式会社

https://www.elecom.co.jp/ (別ウィンドウで開きます)

 

Better being Stories -エレコム株式会社

「特別な道具」ではなく、誰もが手に取れる1台に。エレコムが挑むインクルーシブデザインの第一歩

https://www.elecom.co.jp/pickup/brand/contents/20260205-01/ (別ウィンドウで開きます)

本文は以上です。


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