字幕表示システムCotopat発売元インタビュー

今回は2023年8月に発売された字幕表示システムCotopat(以下「コトパット」)の発売元である京セラドキュメントソリューションズジャパンの担当者の方にコトパットの開発秘話や今後の展望について話を伺いましたので、その内容を紹介します。

 

コトパットは、聴覚障がいのある方や高齢で耳が遠くなった方など、音声でのコミュニケーションに不安を持つ方の課題を解決するために2021年から開発したシステムです。目の前に設置されたアクリル板を活用し、発言内容を文字や図解、動画で表示することができます。
 また、現在7種類の翻訳言語にも対応しており、海外の方との意思疎通もスムーズに行えます。
 

幸田:コトパットを開発しようと思われたきっかけは何ですか。

担当者:新型コロナウイルスの流行により、アクリル板の設置やマスクの着用など新しい生活様式が浸透しました。そのため、アクリル板の設置によって声が聞こえづらくなったり、マスクの着用によって口元が見えないなど、聴覚障がいのある方や難聴の方にとってコミュニケーションがとりづらい環境となりました。そこで、誰もが円滑にコミュニケーションが取れるようにという思いからコトパットを開発しました。
 窓口などの対面式の会話を想定し、単に発話内容を文字に起こすだけではなく、お互いの表情や身振り手振りなど、声以外のコミュニケーションにおける重要な要素を損なわないようにシステムを構築することができないかを考え、透明のアクリル板を活用することにしました。
 

幸田:コトパットの文字認識機能にはAI技術が使われていますか。また、インターネットに接続して使用する必要がありますか。

担当者:文字認識にあたり、文脈判断の機能があり、そこにAIを使用しています。また、テキスト変換機能、翻訳機能にクラウドサービスを利用しています。そのため、インターネットへの接続は必須になります。
 クラウドには、日常会話で使用する用語が数多く蓄積されています。また、関西弁など利用される頻度の多い方言も使われるごとに学習していきます。
 医学や福祉など各分野で使われる専門用語は、利用者が個別に登録していただく仕組みにしています。
 単語の登録は、コトパットの設定メニューから簡単に行うことができます。
 

幸田:コトパットは発言内容を文字におこす以外に、図解や動画も表示することができると聞きましたが、それはどのようなプロセスで行うのですか。

担当者:使用する図解や動画と、それらを呼び出すキーワードを関連付けて登録しておきます。会話の中で登録されたキーワードが発せられるたびに該当する図解や動画が表示されます。
 実証実験では、聴こえる方からも図解や動画があると分かりやすいというご意見をいただきました。通常話されているスピードで話し言葉の語尾まではっきり発音すると比較的正確に認識できます。
 将来的には、言い間違いや誤認識を手動で修正する機能を加えたいと考えています。
 

コトパットは誤った発言内容(言い間違いや誤認識)を手元で修正する機能はありますか。

担当者:コトパットはシンプルな操作を目指したこともあり、手元で訂正する機能はありません。言い間違いや誤認識がある場合は、再度言い直して訂正する必要があります。
 通常話されているスピードで話し言葉の語尾まではっきり発音すると比較的正確に認識できます。
 実証実験では、聴こえる方からも図解や動画があると分かりやすいというご意見をいただきました。
 

幸田:市役所や駅など、にぎやかな場所で確実に発言者の声を認識するために工夫された点は何ですか。

担当者:極力周辺の雑音の影響を受けず、発話者の声だけを拾えるように指向性の高いマイクを採用しています。実証実験では、他の人の声を認識することはほとんどなく、問題なく運用できました。
 また、ある市役所の窓口で行った実証実験では、コトパットを使うことで、話し手と聞き手の双方の声のボリュームが下がったという結果もあります。話した内容を文字化することで、「話が伝わっていないのではないか」という不安を緩和して、お互いが安心して会話できるようになった結果が表れていると考えています。
 

幸田:今後、コトパットをどのように発展させていきたいと考えていますか。

担当者:コトパットは身振り手振りや表情など、コミュニケーションで使用する情報を損なわず、図解や動画、重要語句の強調表示を用い、分かりやすく自然な形でコミュニケーションが取れることを目指しています。
 今後は、双方向の会話の文字化、会話ログの保存機能の導入なども検討したいと思います。
 また、アクリル板への表示に加え、タブレットなどにも対応することで、様々な場面でコトパットを活用できるよう検討していきたいと考えています。
 

【インタビューを終えて】
インタビューを通じ、担当者の方々の熱い思いが伝わってきました。
 大学、役所、病院、観光施設、ホテル、銀行などなど、相手の顔や動作を見ながらコミュニケーションを取る必要がある場所はたくさんあります。
 聞こえない、聞こえづらい、日本語がわからないなど、コミュニケーションに不安を感じている人は多くいると思います。様々な場所で導入され、多くの人のコミュニケーションをサポートするツールとしてますます発展することを願っています。
 

今回もインタビュー風景と実際にコトパットを使用した写真を掲載しています。
ご興味のある方は下記URLにアクセスしてご覧ください。

http://www.itsapoot.jp/mailmaga/interview202312.html

 

【参考URL】京セラドキュメントソリューションズ https://www.kyoceradocumentsolutions.co.jp/

字幕表示システムCotopat https://www.kyoceradocumentsolutions.co.jp/products/ictservice/communication/cotopat/

 


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