無人決済システムを導入したコンビニでの買い物体験

近年、人手不足などを背景にスーパーや衣料品店などでセルフレジが導入されています。

そんな中、2022年11月10日、近鉄布施駅4階の奈良線ホームにTOUCH TO GO(東京都港区)が開発した無人決済システムを導入したコンビニ「ファミリーマート近鉄布施駅4階奈良線ホーム/S店」がオープンしました。

店内には、数十台のカメラが設置され、入店者の顔と手に取った商品がリアルタイムで認識されます。商品を持ったまま出口近くにある決済端末をタッチすると、ディスプレイ上に購入商品と合計金額が表示されます。

支払い方法は、バーコード決済、交通系電子マネー、クレジット、現金が利用でき、画面の指示に従って支払いを済ませます。

入店から決済まで店員さんと顔を合わせることなく買い物ができるため、朝のラッシュ時や電車の乗り換え時など忙しいときも短時間で買い物できます。まさに、「次世代のお買い物体験」ができる店です。
 

しかし、視覚障がいがある方が一人でほしい商品を手に取り、タッチパネルを操作しながら支払いを済ませることは、非常にハードルが高いものです。
そこで、株式会社ファミリーマートにご協力をいただき、iPhoneのFaceTimeを使い、離れた場所にいる人に店内の情報を見てもらいながら、視覚障がいのある私が無人決済システムを導入したコンビニで一人で買い物ができるのか、検証してみました。

 

店舗面積は約23平方メートルで、店内の通路は、コの字型になっています。入り口から出口までは基本的に一方通行で、店内の通路幅は約1メートルほどで人がすれ違うのがやっとの広さです。
さて、この小ぢんまりとした店舗で一人で買い物ができるのでしょうか。
 

まず、FaceTimeで通話を開始し、周囲の風景を映すために内側カメラから背面カメラに切り替えます。
「前に進んでください。」「右に曲がってください。」ITステーションの職員(以下職員という)のガイドを聞きながら、歩いていくとコンビニの入り口に到着、店内に入ることができました。
 

「いらっしゃいませ」店内に入ると左側にあるスピーカーから女性の声が流れます。
職員にスナック菓子とスイーツを買いたいことを伝え、誘導していただきます。
「まっすぐ進んでください。」「右側にスナック菓子があります。」職員のガイドどおり右側を向くとちょうど目の前にスナック菓子の棚がありました。
 

「今、目の前に『じゃがりこ』があります。」まさに私が欲しかったのは、じゃがりこ!職員のガイドに従ってカメラを左右に動かしながらじゃがりこの種類や値段を教えてもらいました。
「サラダ」「チーズ」「じゃがバター」「たらこバター」「のり塩バター」の中から「たらこバター」(177円)を買うことにしました。
 

「たらこバターはもう少し右です。」ガイドに従って「たらこバター」目掛けて手を伸ばすと…、無事に「たらこバター」を手に取ることができました。
今回は買い物の様子を撮影していたため、他のお客様のご迷惑にならないように特別に許可をもらい、小さなエコバッグに商品を入れました。
 

続いてスイーツのコーナーに向かいました。
ガイドに従って歩くとスイーツが冷やされている冷蔵庫の棚の前に着きました。お目当てはプリンです。
「モンブランのプリンがあります。」なんともおいしそうな名前です。お値段を見てもらうと、320円。「モンブラン」という響きに惹かれ、買うことに。
 

「手を前に伸ばしてください。」手を前に伸ばすと縦長のパックに手が当たりました。珍しい形のパックにプリンが入っているものだなあと思っていたのですが、どうやら私は、プリンが置かれている段の1段下の段に手を伸ばしていたようでした。
「もう1段上です。」職員からの指示を受け、1段上の段に手を伸ばすと、丸いカップが手に触れました。お目当てのモンブランのプリンです。こちらもエコバッグに入れて、商品選びは終了です。

 

最後は、支払いです。職員のガイドのとおりに足を進めると、自動決済端末の前にたどり着きました。
支払いは目線の高さに設置されているディスプレイをタッチ操作して行います。職員に画面上の会計ボタンの位置を教えてもらい、画面をタッチします。
私の指の位置がわずかにずれていたようで2・3回タッチしてようやく反応しました。
 

「登録されている商品をご確認ください。」
女性の声で案内があり、画面に購入した商品と値段が表示されました。じゃがりこ「たらこバター味」177円、モンブランプリン320円、合計497円と表示されていることを教えてもらいました。
ディスプレイに触れる位置を教えてもらいながら、PayPay(ペイペイ)での支払いの設定をしました。今回はApple Watch(アップル ウォッチ)でPayPayを起動し、支払うことにしました。
 

職員のガイドに従いApple Watchに表示されているPayPayのバーコードを読み取り機にかざしたのですが…、まったく読み取れません。格闘すること約3分、反応しないので、レジ台に置かれている手持ちのバーコード読み取り機で読み取ると、わずか5秒ほどで決済が終了しました。
「ありがとうございました。」支払いが済むと端末から女性の声が聞こえました。
これで、お買い物は終了です。

 

店の出口のゲートが開き、外に出ることができます。
職員に丁寧にガイドしてもらったので、商品棚や人にぶつかることなく、スムーズに店内を移動することができました。また、少し慣れが必要ですが、支持どおりにカメラを動かすことで、商品の種類や値段を確認することができました。
最後の決済では少し戸惑いましたが、指示通りに指を動かし端末を操作できたことは嬉しかったです。
 

遠隔サポートを受けながらではありますが、一人で棚から商品を取り、決済ができたこと、一人で買い物ができたことに大きな喜びと達成感がありました。
 

通常、買い物をする場合、サポートをお願いするために店員さんを探し、店員さんの手が空くまで待ち、店員さんの手を煩わせないように急いで商品を選ぶなど、気を遣うことも多くあります。その点、今回は、自分のペースで買い物ができ、気持ちもずいぶん楽でした。
 

そんな快適な買い物をサポートしてくれた職員の感想はどうでしょう。
「遠隔サポートは視覚障がいのある方とサポートする方の双方が慣れていないと難しいと思います。視覚障がいのある方は、カメラを向ける向きを把握しておく必要がありますし、サポートする方は、映し出されているものとカメラとの距離感を理解する必要があります。また、サポートする方は、事前にお店の構造や支払い端末の使い方を把握しておかなければ、スムーズかつ正確にサポートできないと思います。しかし、遠隔でサポートすることに慣れ、店の構造や機械の使い方を理解できれば、カメラに映し出された情報をもとにサポートすることは可能だと思います。」

 

今回の買い物体験を通じ、視覚障がいのある方が最低でも下記の5つのことが自分でできなければ、遠隔サポートでの買い物はできないと思いました。
① 自分で身の回りのことができること。
② 自分で周囲の安全を確保できること。
③ 自分でスマートフォンなど使用する機器を使えること。
④ サポートしてくださる方からの指示を理解し、指示通りに行動できること。
⑤ 周囲の人に迷惑をかけないように行動できること。
遠隔サポート中で起きた事故は視覚障がいのある方の自己責任になります。
これらのことを理解したうえで、遠隔サポートを受けて買い物ができるなら、買い物の幅が広がるのではないでしょうか。
 

ファミリーマートの担当者によると、現在、無人決済システムを導入した店舗を30店ほど展開しているそうです。また、無人決済システムを導入した店舗では、安全のため、店員さんが2名ほどおられるそうです。
視覚障がいのある方が私が行ったようにスマートフォンを使って遠隔サポートを受けながら買い物をする場合、確認のため、店員さんが視覚障がいのあるお客さんにお声がけすることがあるそうですが、遠隔サポートを受けながら買い物をしていることを伝えれば問題ないとのことです。
「私たちは、すべてのお客様が買い物しやすい店舗づくりをこれからも進めてまいります。」と担当者が力強く話してくださいました。
 

モンブランのプリン、おいしかったぁ~!

 

【参考】
今回も買い物の様子を動画撮影しました。
ご興味のある方は下記URLにアクセスしてご覧ください。
http://www.itsapoot.jp/mailmaga/FamiMatrial.html

 


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