[2026年02月配信]
今回は、富山盲ろう者友の会の会長で、全国盲ろう者協会で盲ろう者(視覚と聴覚の両方に障がいのある方)を対象にしたICT機器の指導をされている盲ろう者、九曜弘次郎(くよう・こうじろう)さんにインタビューをしましたので、その内容を紹介します。
九曜さんは、生まれつきの全盲で、聴力も年齢とともに徐々に低下し、現在は右耳は人工内耳、
左耳には補聴器を付けられています。
人工内耳にされたことで、静かな場所での一対一での会話などは行えるようになったそうです。
ご自身が盲ろう者になったことをきっかけに、盲ろう者とその支援者の交流及び盲ろう者を
支援できる場が必要と考え、2009年6月に富山盲ろう者友の会を設立され、
富山県内の盲ろう者への支援にも従事されるようになりました。
また、ICT機器を使えば、盲ろう者もメールのやり取りにより通訳・介助者(盲ろう者のコミュニケーションと移動を支援する人)を介さずに直接コミュニケーションが取れるようになったり、
インターネットを利用して自由に情報収集ができるようになることから、「盲ろう者のハイテク
機器活用メーリングリスト」を立ち上げ、盲ろう者のICT機器利用における情報交換の場も
提供されています。
「視覚障がい者向けのICT機器に関する情報交換が行われているメーリングリストもありますが、多くの視覚障がい者は音声(画面読み上げソフト)を頼りに操作します。
点字ディスプレイ(テキスト情報を点字で表示する機器)を頼りに操作している盲ろう者とは
操作方法も手順も異なると感じていました。盲ろう者向けに情報交換できる場があったらいいなあと。
ちょうど、富山盲ろう者友の会がホームページやメーリングリストを運営するために
レンタルサーバーを借りていたので、これを有効活用しようと思い、盲ろう者向けのメーリング
リストを作りました。」(九曜さん)
今では、盲ろう者当事者やその支援者など、多くの方が参加され、活発に情報交換が行われているそうです。
九曜さんとICT機器の出会いは、視覚支援学校に在籍していた中学生のころ。学校にあった
パソコンに触れ、キーボードでの入力方法など、パソコンの基礎を学ばれたそうです。
「もともと機械をいじることが好きで、関連本やマニュアルなどを読んで独学で学びました。
どうしてもわからないところは、友人やメーリングリストなどで尋ね、教えてもらいました。」
(九曜さん)
始めは音声を頼りにパソコンを使用されていたそうですが、徐々に聴力が低下してきたため、
点字ディスプレイを並行して使われるようになったそうです。
そして12年ほど前、「盲ろう者のハイテク機器活用メーリングリスト」のメンバーでもあった
全国盲ろう者協会の職員から声をかけられ、全国盲ろう者協会のICT研修の指導員として活躍
されるようになりました。
最近は、韓国のHIMS社製の音声・点字端末「ブレイルセンスシリーズ」の使い方の指導を希望
される方が多いそうです。
「ブレイルセンスはほかの機械とつながなくても単体でインターネットやメールの送受信ができる
点が盲ろう者にとって便利です。」(九曜さん)
指導される際は、できるだけ受講者自身で操作していただくように心がけているそうです。
「体験していただくことを重視しています。よほどのことがない限り手を出さないように
しています。」(九曜さん)
今年度、全国盲ろう者協会の個別指導で九曜さんの講習を受けられ、iPhoneを使えるように
なられた盲ろう者Dさんから九曜さんのご指導についてコメントをいただきました。
「今回、九曜先生にはiPhoneの使い方を基礎から教えていただきました。説明が丁寧で
わかりやすかったです。iPhoneでいろいろなことができるようになり、なかでも、ネット
バンキングで振り込みをする際に自分で認証番号を確認できるようになったことが嬉しいです。
今後は、Googleを使ってインターネットで検索ができるようになりたいです。」(Dさん)
九曜さんによると盲ろう者によっては点字の習得が難しく、点字ディスプレイに表示される内容の
読み取りや操作に苦労される方も多いそうです。
「点字を読むことに時間を要したり、日本語点字は読めてもアルファベットは読めないなど、
点字の習熟度は人それぞれです。
点字ディスプレイには画面に表示されている内容がそのまま表示されるので、人によっては内容を理解することが大変です」(九曜さん)
点字の読み取りに苦労される盲ろう者が多い中、九曜さんが印象に残っている人がいるそうです。
「10年以上も前のことですが、中途失明者で、点字ディスプレイを使ったパソコンの操作方法の
学習を希望された人がいました。
パソコンと点字ディスプレイを接続し、画面上に表示されている文字を点字で読みながら
操作するのですが、点字の読みに慣れておらず、一つのメニュー項目を読むことに
10分くらい時間を要しました。
正直『このような状態で本当に使えるようになるのかな』と思っていたのですが、その後、
メールを送ってきてくれるようになり、努力されたのだと思うと嬉しかったです。」
(九曜さん)
長年、盲ろう者へのICT指導をされている九曜さん。
盲ろう者がICT機器を学ぶ機会が非常に限られていることを危惧されています。
「盲ろう者の場合、ICTスキルを学ぶ場が極端に少ないように思います。視覚障がい者の場合、
地元の視覚障がい者センターで習うこともできます。また、最近はオンライン講座やYouTube
などの動画、Podcastなどの音声コンテンツで学習することも可能です。
しかし、盲ろう者はそれができません。盲ろう者からICT機器についての相談を受ける中で、
動画や音声コンテンツが利用できないことへのもどかしさを感じています。」(九曜さん)
盲ろう者は読書にも壁があると九曜さんは話します。
独自音声で読み上げられる電子書籍やデイジー図書はテキスト情報が含まれていないため、
点字などに変換することができず、盲ろう者には読むことができません。
「盲ろう者が簡単に使える機器やシステムがほしいですね。」
最後に九曜さんが話してくれました。
今回のインタビューを通じ、盲ろう者のICT利用の重要性と盲ろう者がICTスキルを習得するための環境を整えることの大切さを痛感しました。
盲ろう者の方は通訳・介助者を介さないと情報が入ってこない、コミュニケーションがとりにくい
など、情報収集と会話の自由が制限されています。
しかし、メールやインターネットなどを利用すれば、第三者に知られることなく会話を楽しめ、
自由に情報が手に入れられます。
これらは私たちが普段当たり前のようにしていることです。
盲ろう者への指導者不足や地域特性など様々な課題はありますが、一人でも多くの盲ろう者の方が
ICT機器を使えるようになり、社会から取り残されない環境を作っていくことが重要です。
私も一人の盲ろう者へのICT指導者として、盲ろう者がほしい情報を自由に手に入れられ、
いつでもコミュニケーションが楽しめるよう、ICTスキルの習得のお手伝いができるよう
努めていきたい、改めてそう思いました。
今回もインタビューの様子を掲載しました。ご興味のある方は下記URLをご参照ください。
http://www.itsapoot.jp/mailmaga/interview202603.html
【関連リンク】
富山盲ろう者友の会
https://www.toyamadb.com/(別ウィンドウで開きます)