在宅就労マッチング事業担当者インタビュー

【写真】大阪府ITステーションの視覚障がい者講習室で行われたインタビューの様子。テーブルをはさんで対面に座っています。右手奥が中津サテライトオフィスの安藤さん、左手手前が幸田。

今回は、大阪府ITステーションとお付き合いのある社会福祉法人 大阪市障害者福祉・スポーツ協会 中津サテライトオフィスで在宅就労マッチング事業を担当されている安藤 正(あんどう ただし)さんに障がい者の在宅業務の現状と今後の課題などについてインタビューをしましたので、その内容を紹介します。

 

中津サテライトオフィスは平成5年に社会福祉法人大阪市障害更生文化協会の授産施設として開設されました。その後、法人名称や体制の変更を経て現在は、障害者総合支援法に基づき、就労意欲を持ちながらも一般企業にはなかなか務めることのできない障がいのある方を対象に就労支援A型(雇用型)とB型(非雇用型)の事業所を運営しています。また、これらの事業のほかに障がいのある方が自宅に居ながら受託業務を行う在宅就労マッチング事業を実施しています。

安藤さんは、在宅就労マッチング事業の主担として、登録されている70名以上の障がいのあるテレワーカーに受託した業務を割り振り、テレワーカーが効率的に作業できるようにサポートされています。

 

今回のインタビューは大阪府ITステーションの視覚障がい者講習室にて対面で行いました。

 

幸田:在宅就労マッチング事業ではどのようなお仕事をされているのでしょうか

【写真】安藤さん

安藤:主な受託業務は、音声起稿(テープ起こし)、データ入力、ホームページ作成・更新、動画編集です。 業務全体の半分以上を音声起稿が占めています。以前ITステーションで開催されていた音声起稿師養成講座の1・2期生の修了者が優秀で、仕事に対するモチベーションが高く、熱心に取り組んでくださっています。

かつてAIが起こした原稿を修正する仕事の依頼がありました。その依頼は、AIが元となる原稿をおこしているからという理由で、単価を半額に設定するよう求められました。
しかし、AIが起こした原稿とテレワーカーさんの起こした原稿を比較して内容を確認していただいたところ、人の手で起こした原稿の方が正確で質が高いことが認められました。
それ以来、すべて人の手で原稿を起こしてほしいと依頼が入るようになりました。正確で質の高い原稿を起こしているかぎり、今のところ音声起稿の仕事がなくなることはないと思っています。

音声起稿の需要がある一方で、データ入力やホームページの作成・更新の業務依頼数は減っています。
データ入力は作業が単純だからこそ、単価が安くなります。
ホームページは、作業量や作業期間の割には単価が安いうえ、常に最新技術を身に付けておかなければ、お客様の要望に応えることができません。

幸田:安藤さんが業務を割り振るにあたり、心がけていることや気を付けられていることはなんでしょうか。

【写真】温和な語り口で説明される安藤さん

安藤:テレワーカーとして登録される際に、その方の生活リズムやパソコンの使用環境、趣味、嗜好など様々なことを、会話を通じて探ります。
気になったことを細かく調べる人か。どのような業務に興味があるのか。個人の特性を割り出すようにしています。

作業を割り振る際には、事前に得た情報をもとに、その方の生活リズムや納期などを考慮し、仕事を割り振っています。
安定した生活リズムを乱してまで仕事をする必要はないと思っています。

私もテレワーカーと一緒に仕事をしているという思いでいますので、業務を依頼するにあたっては、コミュニケーションを重視しています。
厳しいようですが、テレワーカーはこちらから見えない環境で働いているからこそ、言葉のキャッチボールができ、お互いに信頼関係を気づくことが重要なのです。

【写真】テーブルをはさんで手前が安藤さん、奥が幸田

幸田:今後どのように事業を展開される予定でしょうか

安藤:今、中心となって働いているのはベテランのテレワーカーの方々です。その方々が年齢を重ね、少しずつリタイヤされる方も出てきています。このままでは先細りしてしまいます。
まずは、テレワーカーのスキルアップをはかり、受託業務が遂行できるようにすること、

そして、新しいテレワーカーを集められるような魅力ある事業にしていかなければならないと思っています。
また、受託業務を増やしていく必要があると思っています。ChatGPTなどで仕事の前処理をし、残りの業務をテレワーカーに依頼するなど、AIを味方につけられるような仕事の開拓をしていかなければならないと思っています。

【写真】リラックスして笑顔で話す安藤さんと幸田。(インタビューは盛り上がり、予定時間を大幅に超えました!)

インタビューを終えて

インタビューを通じ、安藤さんがきめ細やかに各テレワーカーの状況を把握し、丁寧にサポートしながら業務を進められている様子が伝わってきました。
テレワーカーと密に連絡を取れる人間関係を築き、必要に応じてサポートをする。「一人の人間」として普通に接していただいていることに温かみを感じました。そんな安心感があるからこそ、ベテランのテレワーカーの方々も長期間、安藤さんとともに働かれているのだと思いました。

 


このページの元となるメールマガジン記事はこちら

  • 重度障がい者ICT支援のページへ移動する
  • 講習会やイベントのお知らせ等をお送りします メールマガジンのページへ移動する
  • 幸田麻由の職場レポートのメニューに移動する