今回はJA教育研究会の浅田寿展(あさだ・としのぶ)さんに、作成されている様々な外部スイッチ
(アクセシビリティスイッチ、以下「スイッチ」という。)にまつわる話を聞きましたので、
その内容を紹介します。
今回のインタビューはJA教育研究会 北神戸スイッチルームで取材させていただきました。
北神戸スイッチルームは、部材が棚いっぱいに分類整理され、いろいろな工具がすぐ手に取れる
ように整頓されていて、まさに工房・ラボといった雰囲気です。
浅田さんは、技術・家庭科の技術の教員として勤められ、退職後に技術の教材開発をすることを
目的にJA教育研究会を立ち上げられ、主に下記の3つの活動を行っています。
① 技術・家庭科の技術の教材づくり
② 情報教育関係の教材づくり
③ 重度肢体不自由児を対象とした特別支援教育関連の教材づくり
退職後、ある特別支援学校の教員からBDアダプタ
(電極と電池の間に挟んでスイッチを押している間だけ電気が流れるようにするもの)の作り方を
教えてほしいと頼まれたことがきっかけで特別支援
教育に携わるようになりました。
当初は作り方をネットで公開するのみで販売はされていなかったそうです。
しかし、スイッチを自分で作れない方からの問い合わせもあり、作成したスイッチを販売するようになりました。
作成されているスイッチ類には、①単純な材料を使用、②簡単な構造で作る、③壊れてもすぐに
直せる、という3つの特徴があります。
「子どもたちは、家庭、学校、放課後デイサービスなど、複数の場所で時間を過ごします。
高価なスイッチ類を各場所で購入してもらうことはなかなかできません。安価で、壊れても簡単に直せて、すぐ使えるものなら、予備も含めて必要な数だけ買ってもらいやすくなります。」
浅田さんは教員から得たリクエストをもとに様々なものを作られています。
例えば、市販の音声録音再生装置(VOCA)にスイッチを付けられるように改造し、教員やご家族が録音した「がんばれよー!」「こんにちは!」「ありがとう!」などの言葉が流れるようにしたものがあります。
これは、子どもが自分の意志でスイッチを押すことで言葉を発することができるように工夫したものです。
「スイッチを使えるようになるまでが大変で、あきらめてしまう子どもさんや支援の方々もいますが、子どもたちがスイッチを使うことで
何か面白いことができる、世界が広がるということを知って欲しいです。」(浅田さん)
浅田さんは、特別支援教育関係の教員が集まる場でスイッチを作成するワークショップを開催するなど、スイッチ類の機器の作成や修理ができる人材の育成にも力を入れられています。
ワークショップでは、100均などで手に入る安い材料や、インターネットで簡単に買えるものなどを使い、安価で簡単に作成する方法を紹介されています。
「自分が作ったものを広めるより、作れる人、直せる人を増やす方がいいと思っています。」
「機器のフィッティングなどは日々子どもたちと接している教員にお願いし、私はものづくりを専門として、これからも子供たちの可能性を広げるためにも、要望があれば作っていきます!」浅田さんが笑顔で話してくださいました。
インタビューを通じ、「できない」から「できる」へと子どもたちを導くため、様々な材料を使い、工夫されて機器を作られている浅田さんの熱い思いを感じ取ることができました。
ちょっとした工夫で音を鳴らせるようになったり、自分の意志で移動できるようになったり、太鼓をたたいて音楽の授業に参加したり。子どもたちも「自分でできること」の喜びをかみしめていることでしょう。
今度はどんなものができるのか。これからも楽しみです。
【参考サイト】
JA教育研究会
https://www.ne.jp/asahi/ja/asd/jaera/ (別ウィンドウで開きます)
本文は以上です。