今回は4月13日に夢洲で開幕した大阪・関西万博に行き、視覚障がい者当事者として、視覚障がい者向けのアプリや機器を試してみましたので、その内容を紹介します。 第一弾は、「あしらせ」、shikAI(シカイ)、ナビレンスを使用した会場内の移動について紹介します。
「あしらせ」は靴の中に機器を装着して使用するインソール型のデバイスです。
専用の「あしらせ」アプリと連携することで、足の甲、側面、かかとが振動することで、進行方向をナビゲーションします。両足の甲が振動しているときは直進、各足が振動しているときは振動している足の方向に曲がる、かかとが振動しているときは後方に進む、と振動部を感じ取ることで進む方向がわかるように設計されています。また、曲がり角や目的地が近づくにつれ、振動間隔が早くなり、曲がり角や目的地に近づいていることを知ることができます。これらの指示はすべて靴の中に挿入したデバイスから行われるので、歩行中にスマートフォンに触れる必要がなく、白杖で足元を確認し、耳で周囲の情報を得ながら安全に歩行することができます。
今回初めて「あしらせ」を使って歩くため、実際に万博会場で使用する前に練習として大阪府ITステーションから大阪上本町駅までの約800mを歩いてみることにしました。
恥ずかしながら大阪府ITステーションから大阪上本町駅までの地上を通る道のりを知らない私。果たして無事に到着することができるのか。不安を抱えながらの出発です。
まずは、「あしらせ」のアプリ上で行先とルートを設定します。その後スマートフォンは鞄の中などに入れ出発です。
慣れない道を歩いたので、出発時に示された所要時間より時間はかかりましたが、白杖と自分の耳で周囲の安全を確認しながら、無事に大阪上本町駅に到着することができました。「あしらせ」の指示に従って歩いたので、どの道をどう通ったのかさっぱり分かりませんでしたが、確実に目的地に到着していることに大いに感動しました。
今回は、東ゲートから大阪ヘルスケアパビリオンまで行ってみることにしました。距離は170m、曲がり角は0回、所要時間は約3分です。距離も短く、まっすぐ進むだけのようですので、迷うことなく行けそうです。さて、無事に到着できるでしょうか。
動画ファイルはMP4ファイルです。今回の動画では1分あたり概ね28MBという大量のデータを使用します。
通信会社との契約によっては思わぬ出費となる場合がありますので、ご注意ください。
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「あしらせ」を靴に装着して、専用アプリから目的地を探します。
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「あしらせ」を使って大阪ヘルスケアパビリオンを目指します。
公道と異なり、壁も、歩道も、電柱もない広い会場。いきなり方向感覚を失い、空間を把握することが難しい状況になりました。まっすぐ歩いているのか、この道なき道を歩いていてよいのか、どこに向かっているのか。そもそもまっすぐ歩くことが難しい。ちょっぴり不安です。案内では3分とのことでしたが…なかなか思うようにはいかないようです。
果たして「あしらせ」はうまく目的地に導いてくれるでしょうか。
ナビレンスとは、情報を埋め込んだタグ(QRコードに似た四角形のカラーコード=以下、ナビレンスコードという)をスマートフォンで読みこむことで、目的地の内容・方向・距離などの案内が表示されるとともに音声で読み上げてくれる、スペイン発祥の移動支援アプリです。海外では施設内の移動支援だけでなく、バスや電車の乗り場案内や時刻案内などにも使われています。
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音声で最終地点まで導いてくれるナビレンスですが、自分の周囲やナビレンスコード周辺に多くの人がいると、コードを読み取ることができません。
ヨルダン館周辺でナビレンスコードを探してみると、人通りが多く、認識することに時間がかかりました。周辺にナビレンスコードがあるということを知っていれば、辛抱強く探すことができますが、知らなければ、ナビレンスコードがないと思い込み、あきらめてしまいそうです。
shikAIは点字ブロックの警告ブロック上に貼られた二次元コードをスマホなどのカメラで読み取りながら道案内するものです。線状に続く誘導ブロックには二次元コードが貼られていないため、その間は案内がありません。そのため、警告ブロック間の距離が長いと少し不安になることもありますが、点字ブロック沿いに歩いていれば確実に目的地付近に到着します。
動画ファイルはMP4ファイルです。今回の動画では1分あたり概ね36MBという大量のデータを使用します。
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大屋根リングの下の点字ブロックに貼ってある二次元コードを読み取ってヨルダン館に向かいます。小学生の列にぶつかりそうになったり、人ごみを避けたりしながら、点字ブロック沿いに歩いている様子を納めました。さて、その結果はいかに。
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大屋根リングからお手洗いまでshikAIを使って歩いてみたところ、お手洗いの入り口まできっちりと点字ブロックが敷かれているため、迷うことなくお手洗いの入り口までたどり着くことができました。
ちなみにこのお手洗いにはナビレンスコードが貼られているため、スキャンすると、お手洗いの構造などを案内してくれます。
目的地の入り口まで点字ブロックが引かれていれば、迷うことなく、目的地の入り口まで自力でたどり着くことができます。
昼と夜で使用条件に違いがあるかを確かめてみました。
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西ゲートを超えたところにあるフューチャー・ライフ・ヴィレッジから大屋根リング西案内板まで歩いてみることにしました。距離は740m、曲がり角4回、所要時間11分です。
出発して間もなく点字ブロックがあったので、「あしらせ」のナビを頼りに点字ブロック沿いに歩いていくと、目的地の大屋根リング西案内板に到着しました。
徒歩11分のはずが、慣れない道を一人でゆっくりと歩いたということもあり、39分もかかってしまいましたが、時間帯、明るさ、気象条件に左右されにくく、安定して目的地までガイドしてくれる点が「あしらせ」の強みだと思いました。
大屋根リングからいのちのあかし館へshikAIで行こうとしました。大屋根リングの下は照明が十分で二次元コードをすぐに読み取ることができました。
点字ブロックに沿って歩きだしましたが、会場内は街灯はあるもののリング下ほど明るくはありません。静けさの森あたりは特に暗くなっているため、光量が足りず二次元コードが読めません。
懐中電灯も当ててみましたが、うまく読めませんでした。
点字ブロックを頼りに進みましたが、三差路になったところで判断ができなくなり、トレースを中止しました。
やはりshikAIではコードの読める照度が必要なのだと思いました。
今回、試して思ったこと
今回実際に万博会場を歩いて感じたことは、「あしらせ」やshikAI、ナビレンスなど、ナビゲーションアプリを使えば 目的地付近まで誘導してくれることです。
課題は、目的地に到着した後、どう入り口を見つけるかです。
会場内にはあちこちにナビレンスナビレンスコードが設置されており、そのコードを読み取ることができれば、入り口までたどり着くことができます。
しかし、すべての建物・目的地にナビレンスコードがあるわけではありません。また、人が多かったり、周囲が暗かったりするとコードを読み取ることが難しい場合もあります。
そんなときはやはり「人の力」です。万博会場を一人で歩いていると、多くの方に声をかけていただき、サポートしていただきました。
「あしらせ」といった機器、ナビレンスやshikAIといったアプリを使い、できるところは自分でする。そして、ちょっと困ったときは周りの人に助けてもらう。
このようにICT機器と人が融合すれば、私たちの行動の幅もより広がると思いました。
関連ページ
株式会社Ashirase(あしらせ)
NaviLens:ナビレンス
shikAI(シカイ) -リンクス株式会社
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